Ichikawa Lab

Research Theme

Organic Light-Emitting Devices

有機EL

有機LED(別名:有機EL)は、薄型・自発光などの特徴からテレビに最適なデバイスで、すでに商品化が始まりつつありますが、その一方で、消費電力の低減などが現在でも大変重要な課題です。私達は、有機LEDの低消費電力化、高効率化、高耐久性化を念頭に新しい電子輸送材料、ホスト材料、ブロッキング材料などの開発を行っています。

写真は研究室で開発した新しい材料を用いた有機LEDの発光の様子とその材料の分子構造を示しています。この材料によって、消費電力を従来の50%以下にすることが可能です。

Organic Transistors

有機トランジスタ

私たちは液晶テレビなどに用いられる薄膜トランジスタ用の材料の革新に取り組んでいます。現在はシリコンなどの無機系材料が用いられていますが、これを軽くて柔らかく、そして資源枯渇の心配がない有機系材料での代替することが目標です。分子構造のデザインによって、従来のアモルファスシリコンを超える有機系材料としては世界最高レベルの電子移動度をもつ有機薄膜トランジスタの開発に成功しています。

図に示すPTCDI-C13は140℃ほどの低温熱処理で巨大なタイル状グレインを形成し、非常に高速な電子輸送を可能にする有用な薄膜トランジスタ材料であることを見いだしました。

Organic Solar Cells/Photosensors

層間励起移動に基づく光捕集・伝達系を有する有機太陽電池の動作機構

有機太陽電池/光センサー

コストパフォーマンスに優れる新しい太陽電池として、有機薄膜太陽電池が注目されています。これまでに開発を行ってきた有機半導体材料の物理と化学に関する知見を活用し、有機薄膜太陽電池の研究に取り組み始めました。
光のエネルギーを効率よく変換するシステムとして、葉緑体が行う光合成が知られています。光合成は、クロロフィルaの2量体であるスペシャルペアの光励起状態を介して起こる長寿命電荷分離状態が水を酸化し酸素を発生し、また、二酸化炭素を還元し炭水化物(デンプン)とします。スペシャルペアの励起において、重要な役割を担うものとしてタンパク質と結合した色素分子で構成される集光性複合体(light harvesting complex、 LHC)が知られています。LHCは光化学系の構成員ではありませんが、その名の通り、反応を引き起こすために必要な光エネルギーを集める働きをするものです。これらの複合体では、色素が特別な配置で高密度に組み込まれ幅広い波長の光を吸収し、そのエネルギーを光合成反応中心にあるスペシャルペアに効率よく送り込んでいます。この複合体がなければ、光合成による太陽エネルギーの利用は、地球上では成り立たたないと言われています。
私たちは、エネルギーギャップの異なる有機半導体を積層化することで効率的におこる層間励起エネルギー移動を利用し、有機薄膜太陽電池に葉緑素と類似のエネルギー捕集・伝達系を構築することに成功しまた。生物が行う精緻で高効率の反応を手本の一つとし、工学的に応用可能な化学と物理のアイデアをベースに有機薄膜太陽電池の高性能化に取り組んでいます。

Optical and Electronic Characteristics of Organic Semiconductor Crystals

有機半導体結晶の光・電子物性

結晶という理想的な凝縮系を研究対象とすることで、有機半導体物理およびその材料科学の確立を目論んでします。また、この研究の発展を通じ究極の有機デバイスの1つと考えられる有機半導体レーザー実現の可能性を探っています。また、有機半導体ナノ結晶の作製にも取り組んでいます。

Molecular Sensing

分子を用いたナノ環境リモートセンシング

発光性分子を究極の極小プローブとして利用したナノ環境のリモートセンシングについて研究しています.最近、温度のリモートセンシングが可能であることを実験的に見いだしました.すなわち、光合成反応中心に存在するポルフィリンに類似した化合物(CuTPP)が、分子のおかれている環境温度に応じてその発光スペクトルを変化させることを見いだしました.CuTPPはナノスケールの分子温度計として機能します。

CuTPPを有機ELの発光材料として用い、駆動する電流を変化させたときのELスペクトルの変化。長波長側のブロードな発光の強度が相対的に小さくなっていることが分かります。このスペクトル変化から有機ELの“真の”温度が分ります。

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