研究概要

人生100年時代と言われるまでに成長した現代社会において,「食べる」ことは,生きるために必要な行動であると同時に,おいしく食べるという喜びや幸福感を得るという重要な役割を担っています.また,2020年新型コロナウィルス感染下において,感染による味覚・嗅覚障害,そして食事という人とのコミュニケーションツールの減少は,食が人の豊かさに与える影響は計り知れないほど大きいことを改めて認識することとなりました.

当研究室は,ヒトの五感である味覚や嗅覚といった化学感覚をセンシングするケミカルセンサの研究開発を進めています.

研究テーマ① 不織布繊維を用いた表面増強ラマン基板の開発

不織布を表面増強ラマンの基材とすることで,繊維の三次元構造を活かしたSERS基板の開発を進めています.信州大学繊維学部に赴任してから研究を開始しました.繊維学部 先進繊維工学科 冨澤先生に不織布の知見を頂いている共同研究です.このSERS基板は,ガンバイオマーカ分析や匂いセンサへの応用を進めています.

2023-2025年度 基盤研究C 23K03881 代表

研究テーマ② マイクロ流路を用いた味覚センサの開発

ヒトは,甘味,塩味,酸味,うま味,苦味の基本五味と広義の味である物理刺激の渋味と苦味を感じます.これらの味は,受容体やイオンチャネルで外界から受容されます.味覚センサは,味受容体の受容能を人工的に模倣しようとするセンサです.受容部は,高分子,脂質,可塑剤から構成される脂質高分子膜を用いており,膜の電位変化を電気化学的に検出することで,味の強度を近似的に表しています.本研究では,脂質高分子膜をマイクロ流路に配置することで,味物質と脂質高分子膜の静電相互作用や物理吸着を連続的に検出するセンサを開発しています.膜電位の連続的な変化をヒトが感じる味の余韻や立下りに変換する味の可視化を目指します.

研究テーマ③ 味覚ディスプレイの開発

工事中